波多先生をシャドーイングしていると、時々手術着のような水色の服装で、どこかに足早に消えて行く時があります。
昨日もそうでした。
「僕はこれからオペ室だから」
とだけ言い残し、颯爽と立ち去ってしまいました。
その直前まで私は波多先生にくっついて、医師を交えたミーティングに参加していました。そのミーティングではエンジニア(工学博士)のアンドレイが、何かデバイスのCGを医師に見せ説明していました。前立腺ガンの治療に使うデバイスのようです。
「医者に説明する時は、物を見せないと」
と波多先生は言います。エンジニア同士なら、デバイスの説明をするのに物が無くても理解し合えるからでしょうか。用語やシステムそのものにコンセンサスのようなものがあるので、想像しやすいです。これは医用機器以外の製品デザインでも、例えばいつもテレビの開発をしていれば、ちょっと技術的な話を聞いただけで
「ああ、あれをああしてこうしたのか・・・」
と理解できます。でもデザイナーや開発以外の人とコミュニケーションするには、ビジュアルで示すのが一番分かりやすいです。
私はまだ手術室の中に入ることは出来ません。手術に立ち合うための研修が、まだ済んでいないからです。
1人で研究室に戻り、ここまで見て来たことをまとめること数時間。
波多先生とアンドレイが戻ってきました。
先ほどのデバイスを使って初めての手術を行って来たそうです。この2人は医師ではありませんが、デバイスの開発者として手術に立ち合って来ました。これまでにない新しいデバイスで、患者もそれを承知で手術に協力して下さったそうです。患者は意識があり(局所麻酔)、その場で会話も出来たそうです。(※手術は医師が行いました。)
「医用機器の開発者には、そういう協力して下さる患者さんも入るのかも知れないね。(勿論関西弁で)」
「そうですね。」
世界初の手術を終えた波多先生とアンドレイです。水色の服装で記念撮影。
「アメリカの医療機器は、医師が治療現場での知見を基にコンセプトを作っている」ということは、論文で読んだことがありました。でもそれどころか、少なくともBWHではエンジニアが医師とともにフィールドに出ています。患者と直接コミュニケーションもしていました。
ここまではフィールドでの実践の話ですが、工学系の研究では特に実践と理論の両方が必要です。
このあと波多先生は「理論」の活動として、他の研究者と論文のディスカッションに入りました。
服装も変わっています。手前は日本人研究者の徳田先生。ふたりでギャーギャー言い合いながら、なんだか楽しそうです。手術に立ち合ってきたばかりだし、疲れているはずでは・・・。
分野は違えども私も聞き慣れた研究ディスカッションです。
同じく日本人研究者の山田先生・・・も、ものすごく楽しそうです。
このディスカッションはこの後2時間ほど続きました。


