デザインのための観察

デザインを「生活における問題を発見し、それを解決するための創造的思考作業およびその結果」と定義した場合、

・問題を発見することがデザインの第一歩として重要であること
・問題とはまだ満たされていない要求であること
・フィールドを実際に見て問題(要求)発見を行うことが必要であること

とここまでに述べて来ました。
この問題発見のためのフィールド観察ですが、HONDA・カブのコンセプトの基になった問題は、「開発者が設計段階で意図したことと、実際の使用にズレがあったために発見された」ということを、こちらのブログに書きました。

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このような事例は他にもあります。
サントリーの清涼飲料水、DAKARAは、当初は新しいスポーツドリンクを作ろうという企画の基に進められていました。ただどうしても、既存のスポーツドリンクに競合して勝てそうな商品コンセプトが作れませんでした。ご存知のようにスポーツドリンクは、大塚製薬ポカリスエットとコカコーラ社・アクエリアスが、市場をほぼ独占しています。ここに食い込むのは至難の技です。窮地に立たされたDAKARAの開発チームは、実際にスポーツドリンクが消費される現場を観察することにしました。フィールドはコンビニエンスストアです。

しばらく観察した結果、彼等はあることに気付きます。ポカリスエットやアクエリアスは、スポーツドリンクにも関わらず、スポーツマンにばかり買われている訳ではありませんでした。どちらかというと所謂コンビニ弁当と一緒に買われていました。そこで消費者を対象に、何故コンビニ弁当と一緒にスポーツドリンクを飲むのかを聞いてみたところ、
「コンビニ弁当は脂分が多く栄養が偏っていそうなので、スポーツドリンクで栄養バランスを整えたいから」
という回答が得られたそうです。

そこで彼等は新しい清涼飲料水のコンセプトを打ち出します。それはスポーツ時の水分補給ではなく、「余分なものを排出し、身体の栄養バランスを整える清涼飲料水」でした。キャッチコピーもデザイン・コンセプトを端的に表現した「カラダバランス飲料」。パッケージもそれまでのスポーツドリンクが青を基調としていたのに対して、保健室をイメージした白地に赤いハートを強調しました。CMは小便小僧がボソボソ会話をしながら、余分な物を排出するシュールなシリーズです。

この新しいコンセプトの飲料水は売れに売れ、あっという間に清涼飲料水市場で国内トップに躍進しました。この後、似たような後続商品んが次々発売されたことも、いかにDAKARAのコンセプトが斬新で鋭いものだったかを物語っています。

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DAKARAのコンセプトが生まれた背景にも、スポーツドリンクの消費現場を観察し、開発者が設計段階で意図したこと(この場合は「スポーツ時の水分補給」)と、実際の使用(この場合は「食事時に体の栄養バランスを整える」)にズレがあったことがあります。
要求があるのに、それに対応する既存品がないため、仕方なく他の物で代用している・・・という状況を観察で発見した事例です。

これらは医用機器ではないですが、「問題が発見される方法」の一例が分かるエピソードです。

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About mikikumekawa

粂川美紀 Miki Kumekawa 千葉大学大学院工学研究科デザイン科学コース特任助教時代に、独立行政法人日本学術振興会「組織的な若手研究者等海外派遣プログラム」基金により、米ハーバード・メディカル・スクール ブリガム&ウイメンズ病院に客員研究員として滞在しました。このブログはその時の記録です。
カテゴリー: トランスレーショナルデザイン パーマリンク

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