デザインはメッセージ2

前回のつづき》

英文学者にしてメディア論学者のマーシャル・マクルーハンは、著書「メディア論 ー人間拡張の諸相」の中で、「メディアはメッセージある」と言いました。この言葉は様々な解釈なされていて、私も学生時代にこの言葉の意味について友達と考えました。当時はインターネットの黎明期でもあり、大学でもメディア論系の講義が増えて来た時期です。最先端の学問の話といえばメディアに関するもので、マクルーハン等は当時再認識された人の代表格でした。その結果、「メディアの持つ影響は、情報の内容だけでなくメディアの形式そのものにも拠る」という解釈    一般的にも一番有力なこの説で、私たちも全員納得した記憶があります。

具体的に「テレビ」というメディアを例に挙げると、テレビの影響力はテレビが流す「情報」だけでなく、「テレビ」というハードそのものにもあるということです。
テレビというものが世の中に登場して以来、色々なことが変わりました。テレビの登場によって、まず人々の行動が変わりました。食事時に家族で会話するよりも、全員でテレビを視聴するようになったり、家で過ごす時間の大半をテレビの前で過ごすようになったり。これはテレビが流している内容による影響ではなく、テレビというメディアのハード的な形式による影響です。そしてその行動をしているうちに、人々の思考も変化しました。どんな風に変化したのか一例を挙げると、
多くの人の思考が変わると、やがて社会全体の流れも変化します。これはテレビ自体が「メッセージ」を発信し、世の中に影響を与えたから、と考えることが出来ます。

先ほどのインターネットに関しても、まさにこのことが当てはまります。インターネットが人々に向けるメッセージは、インターネット上に散りばめられた沢山の情報だけではありません。「インターネット」というものが登場し、人々の行動を変えて行く上で思考や社会の風潮にまで影響を及ぼしたこと、その結果の現代。こういうものが全てインターネットのメッセージと言うことになります。

インターネットのメッセージについて考えてみましょう。
インターネットが普及してからの行動の変化としては、簡単に、世界中の情報ネットワークにアクセス出来るようになったということ。いつどこの誰とでも連絡が取れるようになったこと。世界中の情報を一瞬で収集出来るようになったこと。これによって個人の行動範囲や意識は確実に広くなりました。情報収集や発信の時間も節約出来るようになりました。近年、日本の大学でも国際化の風潮が強く見られるようになったのは、他国とのコミュニケーションが「物理的に」格段に取りやすくなったこともあると思います。「ガラパゴスニッポン」と揶揄されていた日本も、ついに真の開国の時が訪れたのかもしれません。
勿論インターネットはこれ以外にも沢山のメッセージを内包しています。他のメッセージについては私が浅慮の末に今更言及しなくても、既に沢山の優れた分析がなされているのでそちらをご参考下さい。

これはメディアのみならず、全ての人工物に当てはまることです。元々は1つの製品であったりインフラ、サービスであったものが、人間の行動に影響し、思考にも影響し、その結果社会のあり方を変化させて行くこと。何かをデザインするということは、それほど大きな影響力を持つと言うことなのかも知れません。

ところで、何かを世の中に提案する前に、それがどんな影響力を持つのかを正確に予想することは困難です。例えば自動車の普及が社会をどう変えるか、これを事前に正確に言い当てることは出来なかったでしょう。何故なら、自動車が単体で世の中に存在する訳ではないからです。他にも様々な製品やインフラ・サービスが、次々と生み出されては消えて行く中で、自動車もこうした他のものからの影響を受け、社会的な役割を変化させています。これがどうなるかを予想することは不可能ですし(それはまるで天気予報で雲の動きを全て正確に予想するようなものでしょう)、仮に予想出来たとしても、あまり意味は無いのかも知れません。
ただ、何かをデザインして世の中に提案するということは、いずれ世の中に大きな影響を与えることだということには、意識的になる必要があると思います。最低でも、あからさまに反社会的なものは提案するべきでは無い、ということは確実なことです。

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About mikikumekawa

粂川美紀 Miki Kumekawa 千葉大学大学院工学研究科デザイン科学コース特任助教時代に、独立行政法人日本学術振興会「組織的な若手研究者等海外派遣プログラム」基金により、米ハーバード・メディカル・スクール ブリガム&ウイメンズ病院に客員研究員として滞在しました。このブログはその時の記録です。
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