《前回のつづき》
さて、前回ブログでご紹介した「サムさんの医用機器開発3ステップ」は、サムさんが普段医用機器開発を行う時の手順でもあり、博士研究での手順でもあるそうです。今回はサムさんのお話を分析します。
特徴的なのは、
・メカニカル・エンジニアのサムさんが、臨床現場で自ら「画像診断手術における」問題を観察していること
→すなわちフィールドにおける問題発見
・問題の所在について医師と話し合い、医師の視点/エンジニアの視点それぞれから分析していること
→すなわち学際的な開発方法
以上は、これまでに波多先生をシャドーイングしながら観察して来たことからも、仮説的に導き出したことです。
またサムさんは医用機器の開発手順を3つのステップに分けて説明して下さいました。
ステップ1:プレイモデル(の提案)
ステップ2:ローテク・クリニカル(臨床)
ステップ3:アルティメット・ソリューション(最終提案)
この開発の3ステップについて、以前もご紹介した日本光学機器メーカーおよびフィンランドのC社について、改めて見てみましょう。
こちらの表は、これまで調査して来た3つの国の3つの組織について、開発の3ステップをどのような人が行っているか、人材面について整理したものです。ステップ1について日本が空欄なのは「日本はプレイモデルの提案が出来ないから」ではありません。なんだかそう見えますけど・・・。調査したのが内視鏡の開発事例で、これは開発時点で他社から先行品が販売されていたためです。機器の原理を考える必要がありませんでした。
こういう表を見ると無駄に細かく分析したくなりますが、ブログは学術論文ではないので自粛します。
かなり荒っぽく見ると、フィンランドC社とBWHは、開発に関わる人材のバックグランドは似ています。ただC社は最初のステップを医師が一人で行っていること。また各ステップを担当するのが異なる人材であること。これが特徴的です。とは言え彼等は開発期間中、頻繁に話し合う機会を設けているので、自分のステップが終わったからもう知らない、ということでは無い様です。
BWHは開発の初期段階から、エンジニアが参加しています。医師とエンジニアが対等にコラボレートしていることが分かります。
一方、日本の光学機器メーカでは、エンジニアが孤軍奮闘しています。ただこれは一例に過ぎないので、これも「日本は医用機器の開発に医師が参加していない」と言うのは危険です。胃カメラなんて、エンジニアと医師の共同で発明されました。ただ、医用機器の開発に医師とエンジニア、またはデザイナーなど、様々なバックグラウンドを持つ人達が関わる体制が出来ているかというと、出来ていないのかも知れません。
続いて、開発が行われる場所についても分析しましょう。

※クリックで拡大します
BWHのステップ3については現在調査中なので、現時点で確実に分かっている「メーカ」だけ書きました。他にもデザイン事務所や大学などが関わっている可能性もあります。という前提で見て行きましょう。
BWHは臨床現場で開発している割合が多いことが分かります。それだけ沢山現場を見ていることになります。
孤軍奮闘していた日本のエンジニアも、開発段階ではやはり臨床現場に参加しています。医用機器開発の環境も体制も整っていない中で、このエンジニアが自ら切り開いた開発手法らしいです。この人の話もとても面白いので、いつかまたもう少し詳しくご紹介したいと思います。
サムさんのお話に戻すと、サムさんはこの3ステップについて
「これがトランスレーショナル・リサーチの方法ですよ」
と言いました。
つまりは
・臨床現場で問題を発見すること
・医師とエンジニアが協力して開発すること
これがトランスレーショナル・リサーチにはかかせないプロセスのようです。そしてこれらが重要であることは、他の国の事例からも分かりました。
サムさん、ありがとうございました。
さて、折角ここまでトランスレーショナル・デザインの「開発手順」を調べて来たので、ここからはこれに加えてトランスレーショナル・デザインの発想法について考えたいと思います。
