手術の観察 後編

余談ですが、ブログに書いた後にTinaの部屋の張り紙を見たら、
「Friends of AMIGO」
としか書いてありませんでした。いつの間にか脳内変換され「You are friend of AMIGO !」というコピーを作ってしまいました。

閑話休題。
最初に観察したのは水曜日の朝、前立腺ガンの生体組織検査(バイオプシー)でした。会陰から大きな針のようなものを刺して前立腺の組織を採取します。AMIGOでは次のような手順を取ります。
(1)事前に前立腺のMRI画像を撮影し、採取する組織(病変部)の位置を把握する
(2)術中はMRI画像を撮影し、(1)のMRI画像と重ねながら、組織採取用の器具が病変部に届いているかを確認する

波多先生は不在でしたが、計画した観察方法を確認する意味でも見せて頂きました。エンジニアはサムさん、徳田先生、アンドレイなどが参加していました。徳田先生もサムさんも、私が何を調査したいのかをよくご存知なので、色々とご協力下さいました。

さて、今回の観察調査でもっとも困ったのは記録です。波多先生を初めとするエンジニアの開発の思考プロセスを分析するため、行動や会話をすべて何らかの方法で記録し、後から詳細に分析する計画でした。普段こういう場合はビデオカメラで撮影します。しかし今回に限っては2つの理由でそれは難しそうでした。ひとつは実際にAMIGOに入る前は、もしかすると手術室の中、すなわちMRIなどの装置の近くで観察する可能性もありったことです。MRIは強磁場を発生させる装置なので、その場合はビデオカメラは持ち込めません。もうひとつの理由は、医師やエンジニアの作業を撮影すると、どうしても患者さんも映ってしまうことです。これはプライバシーや倫理的な問題上、避けなければいけないことでした。
そこで今回、出来るだけ全ての動作や会話をその場で観察しながら記録するために、古典的な作業分析に使われていた「サーブリッグ記号」を使うことにしました。

サーブリッグ(Thirblig)記号とはギルブリス(Gilbrith)が開発した動作分析記述のための記号です。Gilbrithを逆から読んで「Thirblig」なのだそうです。人間の細かい動作を17に分け、記号で表したものです。これらを組み合わせて作業動作を記録、分析します。

こちら ↓ がサーブリック記号の一部です。
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例えば「探す」は目のマーク、「選ぶ」は矢印のマークです。シンプルなマークなので、慣れると文字よりも早く書くことができます。
AMIGOと書いてある段の記号は、本来のサーブリッグ記号には無いのですが、自分で作って付け足しました。サーブリック記号ではパソコンに関する動作が細かく分かれていなかったり、普通に「見る」など、今回の観察で重要なポイントとなる動作がないので、いくつか付け足しました。
そしてこの他に会話も出来るだけ時系列で記録し、時系列にその場でプロトコルを書き出すという、とても無謀な計画を立てました。でもビデオが発明される前は、こうやって記録・分析をしていた時代もありました。

AMIGOの中はいくつかのゾーンに分かれています。私はオペ室には入らず、手前のモニタがある部屋から観察しました。手術中に3D Slicerのオペレーションをするエンジニアもそこで作業しています。
ここでどれくらいの行動が記録出来るのか、また何に焦点を当てて観察すれば良いかを検討しました。

プロトコルノート、所謂フィールドノーツはこんな風に記録しました。
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上の段がその場にいる人達、そして時間の経過です。各人が各時刻に何をしたか、どんな会話をしたかを下の段に詳細に書きました。またこの他の全体の雰囲気などは別の用紙に記録しました。
フィールドノーツが英語で記載されているのは、会話が英語だったからです。そうでなければ英語で記載する必要はなく、出来るだけ正確に沢山の情報を書き入れるために、一番慣れている言葉、ツールを使用して構いません。

この手術は波多先生曰く「成熟度が高い」そうです。機器やソフトウェの開発を繰り返し、かなり完成されている段階になっているそうで、確かに全体的にスムーズに進行していました。観察の一番初めは何が起きているのか把握するだけでもいっぱいいっぱいなので、ちょうど良かったです。

そして実際に調査をしてみて、分かったことです。
・全員の動き、会話を記録するのは確実に無理であること。
・エンジニア(サムさん、徳田先生、アンドレイなど)の動き、会話に焦点を絞ると良いこと
・特にエンジニアと医師の会話、エンジニアの視線の動き、場所の移動に関する焦点観察をすると良いこと

この日は午後にも手術が入っていたので、上記のことを意識しながら挑みました。

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About mikikumekawa

粂川美紀 Miki Kumekawa 千葉大学大学院工学研究科デザイン科学コース特任助教時代に、独立行政法人日本学術振興会「組織的な若手研究者等海外派遣プログラム」基金により、米ハーバード・メディカル・スクール ブリガム&ウイメンズ病院に客員研究員として滞在しました。このブログはその時の記録です。
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