医用機器のアジャイル・ディベロップメント1

先週は水曜日だけでなく、木曜日も手術の観察をさせて頂きました。
この日はエンジニアの動きに着目すると共に、医用機器のアジャイル・ディベロップメントがどのように行われているのかにも着目しました。
「アジャイル・ソフトウェア開発」は、元来ソフトウェアの開発手法です。「アジャイル」とは【agile : 俊敏な、素早い】という意味ですが、ソフトウェアでは現場でテストしながら素早く開発が出来るとしても、医用機器のようなハードウェアを含む場合は、どのように行っているのか。その実態を観察しようと思いました。

この日は前立腺がんのブラーキセラピー(日本ではブラキセラピーと言うようです)の手術でした。
放射線を浴びると、細胞の再生機能をつかさどっている「染色体」が破壊されます。原発付近で見たことのない生物を見た、という報告があるのも、被爆が原因で髪が抜けたり白血病になったりするのも、細胞がうまく再生できなくなるためです。この放射線と細胞の関係を利用し、がん細胞の増殖を止めるのがいわゆる「放射線治療」です。
体外から放射線を照射すると、正常な細胞も破壊してしまいますが、ブラーキセラピーはがん細胞だけを殺すために、放射線を出す小さな針のような金属を患部に埋め込む手術です。
前立腺がんにブラーキセラピーをする場合、会陰と直腸を経由して前立腺に針を入れます。針はとても小さいもので、そのまま体内に留まり、放射線を出してがん細胞を破壊します。

このブラーキセラピーのために必要な医用機器は、がんの位置と針の位置を確認する画像診断ソフト、MRIやCT装置、前立腺に針を入れるための機器などです。

手術が始める前、波多先生に
「サムの動きをよく見ておくといいよ」
と言われました。
この日のサムさんは、手術室の中でMRI装置に機器を設置したり、医師に機器の使用方法を伝えたり。サムさんもまた医師の動き、特に装置を使っているところをじっくり観察していました。そして医師の処置が終わると、すぐに手術室から出て来て話し合っていました。
あとからサムさんに話した内容を聞いてみたところ、医師が装置を使ってみて、どこに問題があるか、どうして欲しいかなどの意見を聞いていたそうです。

つまりサムさんは、
・開発した機器を現場でテストすること
・現場からユーザ(医師)要求を抽出すること
これを同時に行っていました。
テストをしながらその場で次の開発段階のコンセプトのための作業をしているということになります。

一般的には、最初に「コンセプト」を作り、それを基に技術開発や製品化を進め、最後に出来たものをテストします。これに対してBWH(ブリガム&ウィメンズ病院)の場合は、テストしながらコンセプトを作り直しています。こうすることで「素早く」まさしく「agile」な開発を実現していました。

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About mikikumekawa

粂川美紀 Miki Kumekawa 千葉大学大学院工学研究科デザイン科学コース特任助教時代に、独立行政法人日本学術振興会「組織的な若手研究者等海外派遣プログラム」基金により、米ハーバード・メディカル・スクール ブリガム&ウイメンズ病院に客員研究員として滞在しました。このブログはその時の記録です。
カテゴリー: トランスレーショナルデザイン, 開発 パーマリンク

2 Responses to 医用機器のアジャイル・ディベロップメント1

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