波多先生からのサジェスチョン

今日の午前中、波多先生から重要なサジェスチョンを頂きました。

「ブログを見て思ったんだけど、医師の要求を工学者が実現しているって言うのは違うよ。」

波多先生曰く、工学者は医師の要求を臨床現場で汲み取り、それを基に開発を行っている訳ではないとのことでした。

「要求は医師ではなく、要求は治療にある。」

医用機器の最大の目的は、医師の要求を実現することではなく、患者を治療することです。そして、このために提案するのはまだ誰もしていない新しい治療方法であり、これは工学者のみが提案する訳ではなく、医師と共同で作って行くものである、とのことでした。

そして更に、「機器開発をする」ということが波多先生達の目的かと言うと、これも少し違うそうです。これは波多先生達が大学で研究していることに関係しています。企業でものづくりをする場合は「その商品をいかに売るか」が目的になりますが、大学での研究では「提案したものがいかに治療に効果があるか。またその効果がどれだけ確実なものか」を理論的に検証する必要があります。
このために研究計画を練り、工学者と医師が共同で、臨床現場で検証して行くというプロセスを踏んでいるのが、BWHの手法です。

このため、工学者と医師、他のバックグランドの人も含めて、チームの人達は皆極めてイーブンな関係にあります。よくあるように、医師がヒエラルキーのトップにいるという構図がありません。それぞれの立場から、それぞれの視点、得意技を持ち寄って、皆で共通の目的を達成するという環境です。

そう言えば、最初の頃に参加したミーティングで、こんなことがありました。
その会議には最初、波多先生と他の工学者が出席していましたが、波多先生は途中で退席しました。それから少ししてフランク医師がやって来ました。(彼がいかに登場したかは、こちらの記事に詳しく書いてあります。)

1人でずっとお話していたフランク医師ですが、途中で
「これについては、Noby(波多先生の呼び名)の意見を是非聞きたい」
と言いました。
フランク先生、なんとこの時点ではその場にNobyがいると思っていたようです。そしてその後、Nobyがいないことに気付きました。

「あれ?Nobyはどうしていない?帰った?じゃあ、いい。Nobyはなんて言ってた?Nobyはなんて言ってたんだ?」

この時、私はまだBWHに来て1週間も経っていませんでしたが、フランク医師が波多先生の意見をとても必要としていること、BWHがそういう環境であることを理解しました。そして同時に、デザイン学者なのに突然病院へやって来て、「医療機器開発の方法論を研究したい」と言った私のことを皆が受け入れてくれたことも、ここではとても自然なことだったのだと思いました。

私は参与観察をしながら、フィールドサーベイで一番大切な「自分が感じたこと」を疎かにしていました。
この前考えたばかりのモデル図は、再考する必要がありそうです。

また次回以降に。

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About mikikumekawa

粂川美紀 Miki Kumekawa 千葉大学大学院工学研究科デザイン科学コース特任助教時代に、独立行政法人日本学術振興会「組織的な若手研究者等海外派遣プログラム」基金により、米ハーバード・メディカル・スクール ブリガム&ウイメンズ病院に客員研究員として滞在しました。このブログはその時の記録です。
カテゴリー: システム, トランスレーショナルデザイン, 開発 パーマリンク

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