AMIGO、再び

今週からボストンは極寒・酷寒・厳寒です。今日は最低気温がマイナス15℃でした。雪は降らずにただただ冷え込んで行く寒さ。このピンとした、冷凍庫の中のような乾いた清潔な寒さは、生まれ故郷の日光の寒さとよく似ていて、私は好きです。高校時代に通学に使っていたJR日光線は、落ち葉が線路に降り積もっては停まってしまう脆弱な路線でしたが、流石に雪には耐性があって大雪では停まることはありませんでした。

ところが今日のボストンは、市内を結ぶ地下鉄(と言っても途中から路面電車に変わる、トラム風の電車)が何度も停まってしまいました。「ボストンの電車は寒いと停まってしまう」という噂をあちこちで耳にしたのですが、何故寒いと停まってしまうのか、その理由は聞く人によって色々なバージョンがありました。伝承のようですね。

今日の午後は再びAMIGOで手術の観察調査でした。この観察に入る前に、昨日波多先生に教えて頂いたことを踏まえて、改めてこれまでの手術のフィールドノーツやプロトコルの記録を見てみました。「工学者(波多先生)が医師の要求を汲み取り、それを反映して機器開発をしている」という思い込みをリセットし、記録を見直してみました。記録自体は何かの視点に偏ることはなく(波多先生の行動に焦点を当てていますが)、目たもの聞いたことを、可能な限り沢山書き取っているものです。ここで恣意的に自分の研究に都合の良い会話や行為のみを書き取ったりはしていません。
そうしたところあちこちに、「新しい治療システムの提案と検証」をしている会話が見えて来ました。医師のTuncali先生が医学的視点から意見をしている言葉、波多先生が工学的立場から観察している様子などなど。

再度焦点を設定し、今日のAMIGOに臨みました。今日の手術は腎臓がんのクライオセラピーでした。クライオセラピーとは「冷却療法」のことで、患部を冷やすことによって治癒させる療法です。AMIGOではがん患者に対してこの治療を行っていました。針のようなものでがん細胞にアルゴンガスなどを流し込み、マイナス40℃まで冷却して活動を休止させます。この時、針が患部に届いているか、どこに刺せば良いかをMRI画像を撮りながら確認します。

実際の手術では、
(1)MRI画像を撮影する
(2)画像を基に、医師が針を刺す
(3)MRI画像を撮影する
(4)画像から体内の針と腫瘍の位置を確認する
(5)医師が針を刺す



と、この手順が繰り返されます。
AMIGOは手術室の中にMRI装置があるので、撮影と針をさすのは手術室の中、撮影の前になると中から医師やナースがバタバタ出て来て、そして撮った画像を外の部屋のモニタで確認します。

と言っても意味が分からないと思うので、今日は後のためにもクロッキー(速写)を描きました(※AMIGO内での撮影を控えたため)。
DSC_0686

中央のガラスの向こう側がMRIのある手術室です。テクニシャンのジャニス、波多先生、山田先生は手術室の手前の部屋で作業をしています。Tuncali先生とザビエル先生は、手術の合間合間にこちらの部屋に出て来て、ジャニスにスライス画像を見せてもらって患部と針の位置を確認します。

こちらはTuncali先生達のその様子をクロッキーしたものです。
DSC_0684

手術室を出て来るとすぐにMRI画像をじっと見て、自分達が刺した針の位置が正しいか、角度は良いかを検討します。
ああだと良い、こうだと良い、今日のケースはこんな具合だ・・・と言う話を波多先生や山田先生ともします。
今までもこういう光景はあり、実はこれは研究のディスカッションだったのですが、私はTuncali先生が工学者サイドに一方的に要求を伝えていると勘違いした場面でもあります。

私も会話を聞き取るために、邪魔をしないように配慮はしながらも図々しく輪の中に入り込んだりもしましたが、誰にも咎められませんでした。ザビエル先生とは以前にもお話したことがあり、私の研究内容をご存知なので、時々
「どうなりました?記録、取れてますか?」
と話しかけて下さいます。

これが「チーム」或は「社会」というものなのでしょうか。
次回、この辺を考察します。

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About mikikumekawa

粂川美紀 Miki Kumekawa 千葉大学大学院工学研究科デザイン科学コース特任助教時代に、独立行政法人日本学術振興会「組織的な若手研究者等海外派遣プログラム」基金により、米ハーバード・メディカル・スクール ブリガム&ウイメンズ病院に客員研究員として滞在しました。このブログはその時の記録です。
カテゴリー: システム, トランスレーショナルデザイン, 開発, 学際 パーマリンク

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