このブログに度々書いて来た「学際」ということについて、少し整理してみたいと思います。
「学際」「学融合」「分野横断」など、色々な表現で表されるこの概念ですが、大雑把に言えば「学問分野の境界を超える」ということで、日本でも近年注目されている概念です。
学問には分野、カテゴリー、ジャンルがあります。例えば「物理学」「化学」「工学」「医学」「農学」「生物学」「民俗学」「社会学」などです。こういう分野がそれぞれに分かれて研究するのではなく、境界線を超えて研究するのが「学際」です。国の境界を超えて活動することを「国際」と言うのと同じです。
とは言え実はこの学問の分野、大昔は現代のようにきっかり分かれてはいませんでした。「哲学」を学問の基本として、その派生に色々な分野がありました。なぜ哲学が基本の学問かと言うと、それは哲学が物事の考え方、思考の方法を扱う学問だからです。私の学位は工学博士ですが、英語にすると「PhD in Engineering」です。PhDは「Philosophy Doctor」つまり「哲学博士」の省略で、全ての学問は哲学に通じているため、何かの学問分野を修めた人は「哲学」を修めたことと同じですよ、という発想に基づいた言葉です。哲学=学問とさえ言えるかも知れません。
例えば古代ギリシャのアリストテレスは、哲学者であり天文学者であり、音楽、倫理学、論理学、政治学、修辞学、動物学、生物学など、様々な学問分野の学者でした。これを現代の感覚で見るとものすごく多彩で学際的な印象を受けますが、これは「哲学」を基本として、そこから色々な分野にその考え方を応用して行ったということです。例えば生物学は生物の系統を分類する学問ですが、この「分類」という概念は「論理学」にも通じるものであり、論理学は哲学の1ジャンルです。こう考えると、何も特に不思議なことはなく、哲学者が学際的に様々な学問を極めているのは、ごく当り前のことです。
アルベルト・アインシュタインも、16歳でカントの哲学を独学で修めたと言います。物理学と哲学なんて、日本の教育システムでは理系と文系にそれぞれ分けられていますし、全く関係ないように思えますが、ここまで学問分野同士が遠くなる前は、それほど遠いものではありませんでした。
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