昨日の午前中は最後の手術でした。
内容は、前立腺のブラーキセラピーでした。これと同様の手術は以前にも観察させて頂いています。実は前回がこの手法を用いた第一回目、言い換えると「世界初」の手術でした。同じ手術を何例も行い、その効果を科学的に立証することが「大学で新しい治療方法の研究をすること」です。
ブラーキセラピーについて、もう一度簡単に説明すると、がん細胞を殺すために、がん組織に放射線を出す小さな針を入れます。針からはごく僅かな放射線が放出されるため、正常な細胞を侵すことなく、がん細胞のみに作用する、という療法です。
前回は第一回目ということもあり、AMIGOには沢山の人がいましたが、今回は全部で12-13人でした。このため観察もしやすく、それぞれが何をしているのかがよく分かりました。
(1)クレア・テンパニー医師がMRI画像を見て、放射線を放出する針を、前立腺内のどこに入れるかを決めます(放射線でがん細胞の活動を止めるため。小さい針を複数入れます)。そしてそれを工学者のアンドレイに伝えます。
(2)アンドレイは、針を入れる位置を画像上の座標で表すとどうなるかを考えます。
(3)サムが針刺しをガイドする機器を、MRI内に設置します。
(4)アンドレイの出した数値にそって、フェローの医師が実際に患部に針を入れます。
(5)入れた針の位置が正しいか、MRI画像を撮影して確認します。
(6)どんな順番で針を入れるかは、その都度クレアが決めます。
以下、(4)-(6)の繰り返し。
以上はそれぞれの人達がどういう仕事をしているかですが、この一連の作業をずっと観察しているうちに、医師、工学者、機器の役割や、全体で何をしているかも見えて来ました。
チーム全体は、新しい治療方法を確立する方向で動いています。新しい治療方法と言っても、単純に
「今までに無いからすごい」
ということではなく、
・患者の負担を、今までよりも減らすもの
・治療の効果を上げるもの
を提案しています。
まず、MRI画像を使って治療を行うこと。MRI画像を、診断ではなく治療に使うということは、身体を切らずに小さな穴のみで身体の中を治療出来るということです。どこに病気があるのかも、切らずに分かります。
そして上記の(3)(4)(5)のプロセスで、正確に、健康な部位に影響がないように病変部位のみ治療をすることが出来ます。
もしも神様がいたら、身体を透視し、最小限で正確な治療を施して、こんな風に病気を治すのではないかというようなこと。これをAMIGOの中で、医師、工学者、それから機器が一体となって実現させていました。
マーシャル・マクルーハンはテクノロジー(とメディア)を「人間の身体の拡張」であると言いました。テクノロジーは人間の身体に備わっている機能を、より拡張させたものであるということです。例えば自動車は足の機能を拡張したものであり、カメラは視覚と記憶を拡張したものです。医療現場における機器にも、身体の機能を拡張したものもありますが、MRIなどは人間には不可能なこと、人間に備わっていない能力を実現させます。それによって従来では不可能だった新しい治療が可能になっているという意味では、医療現場の機器の中は、身体の拡張ではなく「超人間の能力」ということをコンセプトにしてデザインされているのかも知れません。