ワークショップ最終日

昨日の朝は晴れて、街を取り囲むロッキー山脈がくっきりと見えたソルトレイクシティですが、午後から雪が降り出し、夜にはすっかり大雪になっていました。今朝もまだちらついていました。

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こちらの写真は昨日の朝撮影したロッキー山脈です。

月曜日から参加していたワークショップも、今日が最終日。午前中にそれぞれのチームが、1週間の成果を発表しました。1分程度しか時間がないので、概要のみです。
午前中の便で帰る人が多いのか、会場には人が少なくなっていて、残っているチームだけ発表しました。私も簡単に4日間のインタビュー結果ついて説明しました。
インタビュー結果はスクリプト分析をして、コンテクストと構造を明らかにする計画ですが、これはとても時間のかかる作業です。数ヶ月単位かかることもあります。ということで、今日は簡単な考察を述べました。

ホテルで支給されたお弁当を食べる頃には、更に人が減っていました。数日間を共にすごした人達も散り散りになって行き、少し寂しいです。特に昨日の夜は皆でバーに行き、ビールを飲んだりダーツで遊んだりして親しくなったので、余計に寂しくなりました。
今回のインタビューに協力して下さった方々も、とにかく超一流の大物ばかりでしたが、私のお願いを快く聞いて下さいました。ある人とは休憩時間にお茶を飲みながら、ある人とはバーでビールを飲みながら、ある人とは空いていた会議室でケーキを食べながら。とても楽しくインタビューさせて頂くことが出来ました。ひとりひとりのエピソードは、これから少しずつご紹介していきます。
私は元々の研究分野が他の参加者とは違うので、もう会えない人もいるのかも知れない・・・としんみりしながら、私もタクシーで空港に移動。ソルトレイクシティともお別れです。

ところでソルトレイクシティで日本のこけしのような人形を買いました。小さくてかわいらしく、日本の女の子の名前が付いていました。
ソルトレイクシティは「第二次世界大戦中に太平洋岸の諸都市で強制収容キャンプに移住させられた日系人を戦後積極的に受け入れたことから、現在でもアメリカにおいて日系人の比率が高い都市の一つとなっている。 」とWikipediaにあるように、街でもちらほら日系人らしき人達を見かけました。そういう背景があるので、こけしがソルトレイクシティのお土産になっているのかと思いました。そうだと面白いという希望もありました。
が、実際は海外で流行っている「kimmi doll」というキャラクターらしいです。オーストラリアが発祥だそうです。

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インタビュー その後

昨日、今日と沢山の方に、トランスレーショナルリサーチに関するインタビューしました。

簡単にご紹介すると
・かつては大学の先生→現会社経営者のスティーブ(コンピュータサイエンティスト)
・企業でSlicerを利用したオープンソースソフトウェアの開発をしているステファン
・GEで長年CT、MRIの開発をしていたモーリー(複数のベンチャー企業の経営者)
・同じくGEで長年医療用ソフトウェアの開発をしているビル(医学、ビジュアライズで23の特許を保有)

簡潔に書きましたが、一人一人が超一流の開発者、リサーチャーです。彼等の話はこれから少しずつ詳細をご紹介致します。

インタビューの内容は、これからスクリプト分析をして構造分析を行います。詳細な分析・考察ではなく、インタビューをしてみた感想や印象は、

トランスレーショナル・リサーチのポイントとして、昨日もご紹介したことですが、多くの方が
・現場での観察
・医師との対話、コミュニケーション
・医師との知識の共有
・ユーザ要求を先に見付け、それを基に技術開発すること
これらを挙げていました。
実は、ここに挙げたことは「ヒューマンセンタードデザイン」のプロセスとしてISOに規定されているものとかなり重複しています。そして以前のブログに書いたように、ユーザ要求を発見する体系的な方法がない・・・というのも、今のところは同じでした。体系的では無いけれど、エンジニアそれぞれが経験則や優れた直感などにより要求を発見しているようでした。

これをモデル化するために、今回はもう1つの質問をしています。オープンソースの利点、特長は何だと思うか?ということです。エンジニアが考えるオープンソースの利点が、何かしらトランスレーショナル・リサーチのヒントになっているのではないか。という仮説に基づく質問です。これについては以下の回答が得られました。
・ユーザの要求を直接反映するツールであること、すなわちユーザ中心設計がしやすいこと
・無料であるため、ユーザの裾野が広いこと
・企業がオープンソースのソフトウェアを開発する場合、宣伝効果が非常に高いこと

これらのデータを詳細に分析すれば、トランスレーショナル・リサーチの手法がもっとクリアになります。一体どんな秘密が隠されているのでしょうか。

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Tinaへのインタビュー

今日でワークショップも3日目。昨日、今日までに2人のリサーチャーにインタビューをしました。
ワークショップの会場は、大きなホテルの会議フロアです。何部屋かを貸し切り、参加者がそれぞれのチームで作業しています。
1人で複数のプロジェクトに参加している人もいるので、皆さんとてもお忙しい中、私のために時間を割いてくれました。

一人目はこの前もご紹介したTina Kapurです。Tinaは同じ研究室のメンバーでもあり、普段からお喋りはしていますが、今回は改めてインタビューしました。

Tinaの経歴はMIT(マサチューセッツ工科大学)でコンピューターサイエンスのPhDを取得した後、GEに勤務。それから紆余曲折を経てBWHで研究するようになりました。元々、医用ソフトウェアの開発が専門だそうです。
最初にTinaにインタビューを頼んだ時、彼女はとても忙しそうで
「今日は難しいから、明日でも良い?」
と言っていましたが、夕方頃に私の所に来て
「ミキー、今からインタビュー受けられるよー」
と言いました。
「忙しく無いんですか?」
「忙しいけど、疲れたから気分転換したい・・・」
「な、なるほど。分かりました。」

そういう訳で早速インタビューを開始しました。

まずはTinaのトランスレーショナル・リサーチのプロセスについて質問しました。
「とにかくフィールドで観察すること。フィールドに行かないと、何もアイデアがないのね。ミキの言う『問題』について、どんなものがあるのか分からないから。・・・問題には2つあると思う。1つは人間側の要求で、もう1つは技術的な問題。私たちがぶつかるのは、技術的な問題が多いね。とにかくよく見て現場を見て・・そしてブレインストーミングを始めて、ここはコンピューターがやった方が早いか、人間がやった方が良いかということを考えるの。何度も何度も現場を観察することにしているよ。こういうことは医師ではなくエンジニアがやるようにしている・・・それは医師は忙しくて時間が無いから。」
「手術の現場では、医師と一緒に観察してるんですよね?」
「そうそう。だから私は自分の観たこと、考えたことをワークフローにして医師に見せることにしているよ。」
「それは知識や理解を共有するためですか?」
「うん。」

それからTinaにオープンソースについても聞いてみました。
「オープンソースの長所は・・・無料で使えるということ。これでユーザが増えるし、そして沢山の人と繫がれること。それからユーザが機能拡張することが出来るということ。」

Tinaは「iGyne」という医用画像ソフトの開発をしています。iGyneの「Gye」は「gynecology」つまり婦人科のことです。彼女は子宮頸ガンや婦人科系統のガンのためのSlicerを開発しています。

Tinaのトランスレーショナル・リサーチは、
・現場で問題を発見すること
・医師と情報を共有するために、エンジニアとして考えたことに関するワークフローを作成していること(ビジュアル化)
・ブレインストーミングによる解決案の提案

またTinaはオープンソースの利点として
・無料であること→価格面での使用のハードルが下がること→沢山の人達がコミュニティに参加出来ること。
・機能がユーザによって拡張されること

以上は純粋なるインタビュー結果ですので、これから分析し、考察して行きます。

こちらはある日のTina@BWHです。

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NBA観戦 ユタ・ジャズ vs ダラス・マーベリクス 2

前回のつづき》

前回同様に、写真を中心にお送りします。

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白いユニフォームがジャズ、青がマーベリックスです。確かにとても良い席で、実際は写真よりも近くはっきり見えました。
当たり前ですが、選手が大きい・・・そしてとても滑らかに静かに動きます。鹿やシマウマのような草食獣の動き方に似ていました。

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ゲームが中盤に入った頃、こんなものが配られました。
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チア・スティックと書いてあります。中身を取り出して、空気を入れると
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こちらの棒になります。

ジャズの本拠地なので、お客さんはほとんど皆ジャズファンです。
マーベリクスのフリースローの時は、皆こんな風にこの棒を振り回し、叩いて、相手の集中力の邪魔をします。
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どんどん盛り上がって来て、再び年末のお祭りムードに。

休憩時間には、飛行船も飛んでいました。
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ジャズのマスコットキャラクターの羆(多分)は、
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ケーキを持って観客の顔に投げたり、高下駄を履いてゴルフをし始めたり。

銀行が提供する「床に現金を撒いて、子供が出来るだけ沢山拾うゲーム」もありました。銀行だから現金拾いというストレートな生々しさにびっくりですが、隅々まで徹底したエンターテイメント魂に感心しました。

試合自体は最後まで接戦で最終的には100vs94で地元ユタ・ジャズが勝ちました。

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客席も大盛り上がりです。
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チアガールも喜んでいます。
この写真の男の子が着ているのはジャズの25番、アル・ジェファーソンのユニフォームです。選手の中でも一際大きいと思いましたが、調べてみたら208cmもありました。私よりも60cmも大きく、なんと1.4倍もあります。

初めてのNBA観戦は、テレビで観るのとはまた違い、迫力のあるゲームを楽しめるのに加え、華やかなエンターテイメントでした。今回はとても観やすくコートに近い良い席でしたが、それほど高額でもありませんでした。いつかまた行ってみたいと思います。

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NBA観戦 ユタ・ジャズ vs ダラス・マーベリクス 1

昨日の夜はNBA観戦に行きました。ボストンを発つ前日の夜に、波多先生から連絡があり、
「観に行きたい人はチケットの予約をするので、明日の午前中までに返信ください」
とのことだったので、急いでお願いしました。他にも山田先生や、日本から今回のワークショップに来ている人達なども一緒に行きました。

NBAを生で観たことは勿論ありません。せっかくアメリカにいるのだから、一度くらいはNBAかNFLを観たいとは思っていましたが、まさかこんなにすぐに実現するとは思いませんでした。波多先生からの「良い席が取れました」とのメールに、出発前から浮かれまくっていました(ただし1人でソルトレイクシティまで移動して来たので、その間は表面上は真顔、内心ものすごくウキウキしているに留まる)。

波多先生はチケットが取りやすいことなどから、普段ボストンにいる時よりも出張の際によくスポーツ観戦をされるそうです。ボストン近郊は富裕層が多いため、スポーツ観戦のチケットは直ぐに売り切れてしまうそうです。

さて、昨日のワークショップの後、
「先に食事する?」
という波多先生のご提案に
「アリーナで食べましょう」
と無理矢理いそいそ移動し、無料の市内電車(路面電車)に乗って、アリーナにやって来ました。

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エナジーソリューションズ・アリーナです。ソルトレイクオリンピックの時に、スケートアリーナとして建てられたそうですが、今はユタ・ジャズの本拠地になっています。

一緒に来た人の1人が、入り口のセキュリティで引っかかってしまいました。なんと、バックパックでは入場出来ないのだそうです。その人だけどこかに連れて行かれてしまいました。何故バックパックだけダメなのはは分かりません。

その人を待つ間、私たちは一足先にビールで乾杯しました。
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コップもジャズのロゴ入りです。
浮かれまくっていたら、波多先生に
「来て良かったね・・・。はしゃぎ過ぎ・・・。」
と若干呆れられました。

さて、ここからは写真中心で進行します。

こちらは試合前に国歌を聴いているシーンです。斉唱ではなく、中央にいる数名が唄っていました。
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選手も観客も右手を左胸にあてて、国歌に聴き入ります。

そして本場のチアガール登場!
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チアガールはこの後も、ブレイクの時などに度々登場しました。皆でいちいち同じ動きをしていて、本当に可愛らしかったです。

そしていよいよティップオフです。
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長くなるので《つづく》

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ワークショップ@ソルトレイクシティ

今週から寒いボストンを離れ、より一層寒いユタ州ソルトレイクシティにやって来ました。モルモン教の宗都として知られるソルトレイクシティは、2002年の冬季オリンピックの開催地だっただけあり、とにかく猛烈に寒いです。北緯はそれほど高くありませんが、ロッキー山脈の西側に位置しており、標高がとても高いのです。
ここに来たのは「National Alliance for Medical Image Computing」が主催するワークショップに参加するためです。期間は本日より今週の金曜日まで。ワークショップというのは、開催期間内にグループワークなどを行い、その場で作業をして成果を出す活動です。

さて今回のワークショップですが、「National Alliance for Medical Image Computing」が主催しているだけあり、もちろん画像診断がメインテーマです。私もこれまでにデザイン系のワークショップに参加したことはありますが、画像診断は初めてです。一体どんなものなのか、少し緊張。
今日は第一日目ということで、この一週間にどんなテーマに取り組むかを各々発表しました。司会は我らが研究室のPIの1人、Tina。実はTinaは私が最初に研究室を訪れた時に、初めて声を掛けて紅茶を淹れてくれた人でもあり、今も顔を見るととても気さくに
「Hi, Miki ! How are you ?」
と話しかけてくれます。

こちらが司会をするTina。
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他の人の発表の様子はこちら。
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厳かな雰囲気ですが、発表自体は1人1分くらいの短いものでした。

参加者一同が画像診断に関するテーマを発表する中、私のテーマは
「Investigating Role of Open Source In Translational Research」、トランスレーショナル・リサーチにおけるオープンソースの役割についてです。今回は著名な画像診断の研究者がソルトレイクシティに集まっています。この機会に3D Slicerの開発秘話を含め、波多先生のシャドーイングやサムさんへのインタビューで導いたトランスレーショナル・デザインの手順の仮説の検証、そして「オープン・ソース」という大きなヒントを基に、開発者がどのようにコンセプトを組み立てるのかを調査する予定です。
案の定、私が自分のテーマを発表している間、参加者は一同不思議そうな表情をしていました。

この後、別室で波多先生と調査についてお話ししました。
「さっき皆の前で変なこと言って来たでしょ?」
「変なこと・・・、ええ、はい。」
「皆あれで、どういう研究してるか分かったから、これから誰にインタビューすれば良いか教えるからメモして下さい」
「はい、はい。」

波多先生のインタビューの指示は、錚々たる研究者ばかりでした。

私の恩師がいつも言っていたこと。
「一流のデザイン研究をしたいなら、一流のデザイナーを対象にしないといけない」
「マズロー(※エイブラハム・マズローのこと)の研究がすごいのは、成功者(自己実現した人)を調査対象にしたからだよ」
そういう意味では、今回は研究対象に恵まれ過ぎていると言えます。一流の医用機器の研究者にインタビューが出来ますし、いつも何気なくくっついて歩き、何でも見せて頂いている波多先生も超一流の研究者です。

「そういえば私が発表している時、皆怪訝そうな顔していましたけど、大丈夫でしょうか?」
「うん、大丈夫、大丈夫。それは英語がへたくそだったからだよ」
「あ、そうか!なるほど!安心しましたー」

ではなく、インタビューに備えて英語の練習をしてから寝ようと思います。

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採用面接

ここ最近で、何度か研究室の採用面接に同席させて頂きました。研究員の面接、それからリサーチアシスタントの面接などなど。
研究員の採用面接の手順は、

1)書類
2)一次面接:PIである波多先生と面談
3)二次面接:波多先生をはじめ、サムさんなど他の研究員の前で、自分の研究のプレゼンテーション

今のところ、ここまで見せて頂きました。同席させてくれる研究室の人にも驚きますが、面接を受けに来た人も
「見学していいですか?」
「ええ、いいですよ、もちろん」
という気前の良さで、毎回驚愕します。さすがに写真撮影は控えていますが。

ここまで面接に来た数名の人達は、皆色々な国の出身でした。とてもインターナショナルです。なんとなく
「アメリカの大学だから、アメリカ人がいっぱいいる」
と思ってしまいがちですが、そんなことはありません。
既に研究室にいるメンバーに関しても、日本/韓国/中国/インド/スイス/ハンガリー/フランス/アメリカ/・・・今把握しているだけでも、少なくともこんなに色々な国のメンバーがいます。

さて、研究室メンバーの人件費は研究費から出ています。PIのお給料も研究費から出ていることは以前も書きましたが、研究費の殆どは人件費に使われるそうです。
ところがこの研究費というのが結構複雑で、1人のPIが1つの研究費だけを獲得している訳ではなく、1人でいくつも平行して研究費を取り、それぞれの研究プロジェクトで人を雇い、また自分も他のPIの研究プロジェクトに参加していたりもします。こんな複雑なお金の管理をするのは大変ですよね。これだけで研究時間が何時間も取られてしまいます。

こういう管理を全て担っているのが、こちらの方。
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Trey Campbellさんです。Treyさんは研究費の管理の他、新規メンバーの採用手続きの補助などを行っています。彼はSPLに雇用されているので、研究分野で雇用しているスタッフということになります。

この日は波多先生と研究費について、人件費が今現在どうなっているか?誰に何%あげられるか?などの話をしていました。管理しているとは言え、あれはだめこれはだめ、というのではなく、相談に乗って一緒に考えてくれる、という存在なのだそうです。

研究室には医師や研究員だけでなく、色々な業務を受け持つスタッフがいます。そしてそれぞれが自分の業務に集中出来る環境が整っている様でした。

ところで、Treyさんも病院内ではなく、近くのビル内のオフィスにいます。そのフロアのエントランスに、こんな絵が飾ってありました。
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波多先生曰く
「MRIを象ったアート。」
だそうです。MRIによる検査を受けたことがある方は分かるかと思いますが、あの穴の部分です。

こっちの方が分かりやすいかもしれません。
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1249のワナ

どれだけ文明が発達した豊かな先進国であろうとも、やはり慣れない海外で油断すると大変な目に遭います。

前回のブログでご紹介した1249で、ある日私は何となく紅茶を飲もうと思いました。
海外での飲食について、ものすごく気を使う方もいらっしゃいますが、私は細かいことを気にせず何でも食べますし、水も最低限以上には気にせず飲んでしまいます。要するに、口に入れるものに関して、いつでもどこでもあまり注意を払っていないということです。

この日も、自分で淹れたティーバックの紅茶を飲むだけだったので、ものすごく油断していました。緊張感の欠片もなく、紙コップに紅茶をセットし、ウォーターサーバーからお湯を注ぎました。何か下らないことを考えていたような気がします。
少し待つと紅茶が良い具合に抽出されて来たので、よし飲もう・・・と口をつけようとした瞬間、何か異変が起きていることに気付きました。

紙コップを持っていた指が、なぜかヌルヌルしているのです。
なんだこれ?と思って紙コップをよく見ると、紅茶の表面に油が浮いていました。
何かがおかしい、何か今まで体験したことのない状況に直面している・・・と思い、やっと気を引き締めて焦りながら観察開始。するとなんだかよく分かりませんが、紙コップの表面に何故かロウが塗ってあり、それがお湯の温度で溶け出していたのでした。

紅茶はこのコップに淹れました。
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一見普通のコップです。でも、言われてみれば手触りが妙にツルツルしていましたが。

お湯を入れるとこんな風になります。
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ロウが溶けて表面で光っています。

結構沢山塗ってあるようで、段々下の方にロウが溜まり出しました。
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紅茶に浮いていた油も、溶けたロウでした。水を入れて冷やすと、
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固まってふたたびロウの姿に・・・。

コップを良く読むと、冷たい水用のコップであることが書いてありました。冷静に考えてみれば、紙コップは紙なのだから表面に何か加工をしないと、水が漏れてしまいます。ずっとポリエチレンで加工されているものしか無いのだと思っていましたが(マクドナルドなどの毛が生えた耐熱コップ以外)・・・。世界は広いですね。油断大敵です。

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1249

1249と書いて「トゥエルブフォーティーナイン」。そのままですね。これはBWH(ブリガム&ウィメンズ病院)の研究のための別棟のことです。場所はBWHから徒歩15分ほど、ボストン・レッドソックスの本拠地であるフェンウェイ・パークのすぐ目の前にあります。何故1249というかと言うと、ビルの住所が1249だからです。建物にも目立つ場所に1249と書いてあります。もしかすると、正式名称では無いのかも知れません。
この建物には、私が滞在しているSurgical Planning Laboratory(以下SPL)をはじめ、精神科など画像診断を行うラボが入っています。BWHだけでは敷地に限りがあるので、SPLに限らずこうした別棟がいくつかあるようです。病院の敷地は診断や治療に優先的に使用しているのだとか。

1249では機器の開発の他、会議なども行われます。私も既に何度かお邪魔しました。今日はここの内部をご紹介します。

入って直ぐにあるのが、ここ。
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研究デスクのコーナーです。広いですね。がらーんと広くて、贅沢な空間です。

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波多先生の机もありました。波多先生は病院内にオフィスがありますが、論文執筆などの集中する作業の時はこちらを利用しているそうです。

波多先生の机の足下を見ると・・・。
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ツボ押しが。確かに、リラックスして集中出来そうです。

このコーナーから更に奥に行くと、
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工房がありました。病院内にはこういう場所は無いので、今まで皆どこで工作しているんだろう、と思っていました。

ちゃっかりと、精神科のフロアにも行ってみました。
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学術誌が置いてあります。
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精神科では脳の画像診断をしているようです。脳波や機質など、診断に重要な情報を知るのは画像です。

こちらはまた別の日、1249で電話をする波多先生です。
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電話しているようには見えませんが・・・。
「受話器持って無いじゃないか」と思われるかも知れませんが、実は向かって右にある灰色の不思議な装置も電話機です。波多先生はこの電話を使って、誰かと話していました。

この変わった電話機、ここだけでなく他の場所でも見たことがあります。
アップにすると、こんな感じです。
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最初に見た時は、これが電話機だと思いませんでした。「なるほど!ザ・ワールド」の問題に出来そうです。
上の三角形の部分が、マイクとスピーカーになっているようで、ここに向かって話し、相手の声もここから聞こえて来ます。電卓のような部分がダイヤルだと思います。多分。

何も知らないと、まるで壁の絵と話しているようにも見えます。
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サムさんの医用機器開発3ステップ 2

前回のつづき》

さて、前回ブログでご紹介した「サムさんの医用機器開発3ステップ」は、サムさんが普段医用機器開発を行う時の手順でもあり、博士研究での手順でもあるそうです。今回はサムさんのお話を分析します。

特徴的なのは、

・メカニカル・エンジニアのサムさんが、臨床現場で自ら「画像診断手術における」問題を観察していること
 →すなわちフィールドにおける問題発見
・問題の所在について医師と話し合い、医師の視点/エンジニアの視点それぞれから分析していること
 →すなわち学際的な開発方法

以上は、これまでに波多先生をシャドーイングしながら観察して来たことからも、仮説的に導き出したことです。

またサムさんは医用機器の開発手順を3つのステップに分けて説明して下さいました。

ステップ1:プレイモデル(の提案)
ステップ2:ローテク・クリニカル(臨床)
ステップ3:アルティメット・ソリューション(最終提案)

この開発の3ステップについて、以前もご紹介した日本光学機器メーカーおよびフィンランドのC社について、改めて見てみましょう。

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※クリックで拡大します

こちらの表は、これまで調査して来た3つの国の3つの組織について、開発の3ステップをどのような人が行っているか、人材面について整理したものです。ステップ1について日本が空欄なのは「日本はプレイモデルの提案が出来ないから」ではありません。なんだかそう見えますけど・・・。調査したのが内視鏡の開発事例で、これは開発時点で他社から先行品が販売されていたためです。機器の原理を考える必要がありませんでした。

こういう表を見ると無駄に細かく分析したくなりますが、ブログは学術論文ではないので自粛します。
かなり荒っぽく見ると、フィンランドC社とBWHは、開発に関わる人材のバックグランドは似ています。ただC社は最初のステップを医師が一人で行っていること。また各ステップを担当するのが異なる人材であること。これが特徴的です。とは言え彼等は開発期間中、頻繁に話し合う機会を設けているので、自分のステップが終わったからもう知らない、ということでは無い様です。
BWHは開発の初期段階から、エンジニアが参加しています。医師とエンジニアが対等にコラボレートしていることが分かります。

一方、日本の光学機器メーカでは、エンジニアが孤軍奮闘しています。ただこれは一例に過ぎないので、これも「日本は医用機器の開発に医師が参加していない」と言うのは危険です。胃カメラなんて、エンジニアと医師の共同で発明されました。ただ、医用機器の開発に医師とエンジニア、またはデザイナーなど、様々なバックグラウンドを持つ人達が関わる体制が出来ているかというと、出来ていないのかも知れません。

続いて、開発が行われる場所についても分析しましょう。
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※クリックで拡大します

BWHのステップ3については現在調査中なので、現時点で確実に分かっている「メーカ」だけ書きました。他にもデザイン事務所や大学などが関わっている可能性もあります。という前提で見て行きましょう。
BWHは臨床現場で開発している割合が多いことが分かります。それだけ沢山現場を見ていることになります。
孤軍奮闘していた日本のエンジニアも、開発段階ではやはり臨床現場に参加しています。医用機器開発の環境も体制も整っていない中で、このエンジニアが自ら切り開いた開発手法らしいです。この人の話もとても面白いので、いつかまたもう少し詳しくご紹介したいと思います。

サムさんのお話に戻すと、サムさんはこの3ステップについて
「これがトランスレーショナル・リサーチの方法ですよ」
と言いました。
つまりは
・臨床現場で問題を発見すること
・医師とエンジニアが協力して開発すること
これがトランスレーショナル・リサーチにはかかせないプロセスのようです。そしてこれらが重要であることは、他の国の事例からも分かりました。
サムさん、ありがとうございました。

さて、折角ここまでトランスレーショナル・デザインの「開発手順」を調べて来たので、ここからはこれに加えてトランスレーショナル・デザインの発想法について考えたいと思います。

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